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「琉輝君だって自分の命は惜しいよね?」
「ああ」
更に動揺を呼び込むように、言葉を投げかける。
動揺を誘うことが目的なのか。単純に真実を述べているか。時間稼ぎか。
目的が掴めない。葉咲の心理状況が読みとれない。
「彼女の命だって惜しいよね!」
「ああ」
それでも質問は答える。先を促す。今の俺に時間稼ぎは何の意味も為さない。
「あはっ!素直だね!」
そんな言葉が俺を苛立てる。
それでも―――素直に命乞いを求めた。
そりゃあ誰だって人の命は惜しい。
自分の命。大切な人の命。どれであろうと“命”を要らないと思う人間なんて存在しない。
そう。だから―――人は嘘を付くんだ。
だから人は逃げるんだ。
だから人は臆病なんだ。
自分の命を守るために人は人を欺き、怖がり、逃げるんだ。
「だったら戦いはやめない?」
そう。今目の前にいるこいつのように。
「そうだな。やめよう」
敵を惑わせ、戦いと言う解決策を奪い、平和を望む。
だけど―――それに何の利点がある。俺より強いこいつが戦う事を避ける意味が分からない。
そこから考えられる結論は“理由”があると言うこと。戦いを避ける理由が。
そうだとしたら、流れに沿うのが得策な訳がない。
「お前の話しが本当ならな」
反する。思い通りにはさせない。
俺はもう一度刀を構え―――駆けだした。
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