始まりはいつも理不尽

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「くそっ!」 どうする。頭の中であらゆる方法を模索する。 でも―――だめだ。 俺が三人に声を掛けた時点でこっちを向くに決まっている。 葉咲と言う存在に気づくことなく、あの人達を帰らせる方法など―――無い。 ならどうする。直に来客は曲がり角に達する。振り向くのは時間の問題だ。 葉咲との距離は数メートル程度。俺に背を見せ、来る人の方へと体を向けている。 逆転の発想。残された策は一つ。三人が葉咲を視界に入れるよりも早く―――葉咲を切る。 どうする。心中で葛藤を繰り返し結論を急ぐ。 策を実行すれば来た人達は確実に助かる。でも、それは―――俺達の死ぬ確率も高まる。 どうしたらいいんだ。迷いばかりが頭を埋め尽くし一向に結論が出る気配は無い。 葉咲との距離は後一歩分。三人の内、一人が振り返ろうとしている。 頭の中にある“迷い”を消す。観点を変えて考える。 何度も自分に言い聞かせていたはずなのにいつしか欺かれていた。 惑わされるな。こいつの言葉は敵を動揺させるための“道具”に過ぎない。 ならば―――自ずと結論は見えてくる。 こいつの話を真実と仮定するからダメなんだ。 こいつは敵。その敵が俺に隙を見せている。それだけで、攻撃する理由は十分。 剣を振るう。己の守りたい者のために。 だが――― 「不意打ちは危ないよ」 その一撃ですら葉咲へは届かない。
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