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「お前達は一度会ってたのか‥‥」
「気づいたようだね!」
「ああ、おかげ様で全部分かったよ」
謎解きを終え、見舞われる達成感。その余韻に浸ることなく集中する。
もう失敗は許されない。賭けている物は自分の命だけでは無いのだから。
考える。思考を巡らす。今、この状況で何をするのが最もな得策なのかを。
こいつの目的は何だ。最初の会話を思い出す。
そして気づく。こいつは―――強い人を求めているだけなのだと。
ならば、もし俺が葉咲の元に行ったらどうなるのだろうか。京香の、三人の命を守れるのだろうか。
答えのない自問自答はただ頭の中をより複雑にするだけ。
問い質そう。そう思い開いた口は―――
「不平等だよね」
言葉を発することなく閉じられる。
聞くタイミングを逃した。いや、俺が喋ろうとしていたことを読まれていたのか。
苦虫を噛み潰したような嫌な気分に見舞われる。だが、そんな気分ですら葉咲の巧妙な話術は一瞬で忘れさせた。
「だから平等にしよう」
平等。葉咲の表情が珍しく変貌する。
寂しげな。切なげな。そんな瞳で俺を見つめてくる。
この瞳は“本物”であるのか。そんな疑問が浮上してくるほど俺は葉咲と言う男を疑っている。
平等にする。俺とあの三人を平等に。
ダメだ。先の言葉を予測しようにもこいつの考えは俺の思考能力を遥かに上回っている。
癪だが今の俺にはこいつのペースを奪う力なんて持ち合わせていない。
“無力”は想像以上に俺を苦しめる。
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