始まりはいつも理不尽

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「琉希君はあの人達のせいで人生の選択肢を失った」 あの三人が俺を強いと伝えたからこいつがここに来た。 だからこいつは全てをこの三人のせいにした。 だけど―――あの三人が何を知っていた。 何も知らず、ただ、俺を強いと認めてくれた。それだけなのに責任を負わされる。 そんな理不尽な葉咲の理論に俺の心は一層煮えたぎる。 葉咲の卑屈な笑み。何かを企んでいる。何を隠している。 林の奥にいた三人は今や葉咲の直ぐ近くにまで到達していた。 そんな三人を絶望に落とすかのように―――葉咲が声を張り上げ叫ぶ。 「だから、君には彼ら三人の人生をあげよう」 まるで死の宣告のような言葉を。はっきりと躊躇いもなく。 ふざけるな。 全てを見透かしているかのように。人の命を手の平の上で転がしているかのように。 そんな人間として非道な言葉を日常茶飯事のように口にするこいつに、俺は怒りを露わにせずにはいられなかった。 唖然となっている三人が葉咲の奥で瞳に映る。 その言葉の意味を聞こうと葉咲に視線を向けた時――― 「う゛っ!」 既にそいつはいなかった。
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