20人が本棚に入れています
本棚に追加
静かな庭に響く呻き声。その声が更に俺に責任感を増させる。
声のした方へと視線を向ける。そこにいるのは赤髪の男。
体が傾き意識は既に保たれていない。そして、重力の重みに沿って体は地面へと接した。
重い音が響き、その背後にいた葉咲が目に入る。
笑顔で。楽しそうに。こいつは―――赤髪に手刀を入れていた。
意識を奪ったのは間違いなくこいつ。
どうやって。いつの間に。移動方法が謎に包まれるが考えている余裕なんて無い。
「おい!」
怒声は葉咲の心に届くことなく視線で一喝される。その笑みは、狂気に完全に満ちていた。
全身にたつ鳥肌が恐怖していることを自身へと伝える。
やめる気配は―――ない。状況把握が出来ているのは俺だけ。
葉咲と視線が交わったのは一瞬。ニヤリと笑い―――姿を消す。
現れたのは赤髪の横にいるふけ顔の男の背後。
―――振り返るまもなく手刀が入れられる。
ふけ顔の男の体が傾き、やがて地面に激突する。
意識を刈り取ると言うことは殺す気は無い。それでも―――このまま立ち尽くしても変わらない。
刹那の時間で葛藤を繰り返し結論を出す。
「ちっ!」
舌打ちを零す。同時に踵を返し、駆け出した。
最初のコメントを投稿しよう!