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残ってるのは、顔の整った男のみ。そのため、必然的に狙われるのはそいつ。
だが―――俺はそいつの元へと向かわない。見捨てるように視界から逸らし駆け出す。
最低。最悪。非道。なんと言われたって構わない。
嫌われることなんて、重々承知。
残ってる命を見捨てて。人間を天秤にかけて。そんな、人間として間違った行動。
だとしても―――いい。
―――それでも大切な人だけは守りたいから。
気づいたんだ。自分の気持ちに。自分の想いに。
「京香!壁を背中に付けろ!」
幸いな事に京香がいる位置は家の近く。
驚きたじろぎながらも俺の命令に従い壁に背をつける。
大丈夫。落ち着け。京香が落ち着いて従ったんだ。
なら―――俺がしっかりしないでどうする。
焦り乱れる心を持ち直し、駆け寄る。
「う゛っ!」
最後の一人が儚く散る。残っているのは俺と京香。
―――京香は俺が守る。
後ろは壁。前に自分を置くことによって死角を無くす。
後は正面から来る攻撃だけを集中して止めればいい。決意を胸に辿り着き即座に振り返る。
俺が前へと振り返った瞬間―――
視界は再び大きく揺れた。
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