始まりはいつも理不尽

34/37
前へ
/78ページ
次へ
威力は実力と直結し絶望へと誘(いざな)う。 世界は急速に移動を開始し、全てが矢のように細く後ろに突き抜けていく。 「あ゛ぁぁ!」 落下。地面を平行に滑り勢いが止まる。 体には尋常じゃないくらい激痛が流れ、一気に汗が噴き出す。 怪我の箇所を確認。肋(あばら)の骨が折れている。着地の失敗により足を痛めた。 見えなかった。気づけなかった。遅かった。 今までとは比べ物にならない程の威力。そして、気づいた。 手を抜かれていたことに。葉咲にとって俺なんか敵ですら無いことに。 呼吸が上手くできない。体が思うように動かない。 動くのは口だけ。自身の叫び声だけが木霊するのが現状。 痛みが体を、心を、脳を、蝕む。そんな状況下、耳は鮮明に一つの声を聞き取った。 「助けて‥」 か弱く、言ったのかも曖昧なほど小さな声。 だが俺にははっきりと耳元で囁くように聞こえた。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加