20人が本棚に入れています
本棚に追加
歯を食いしばっても足は言うことを聞かず、小刻みに痙攣するばかり。
使い物にならない足は痛みだけを鮮明に伝えてくれる。
視界は目から零れた液体によりぼやけだす。
何が大切な人だ。何が強いだ。何が守るだ。
―――何も守れないじゃないか。
助けたい。守りたい。気持ちだけが強さを増す一方、体は一切の動きを見せない。
まるで、見殺しにさせるように―――現実は着実に進む。
霞んだ視界に映る京香の倒れゆく姿。小さな悲鳴を上げ細い体は地面と接触する。
生まれるのは純粋な悔しさ。守れなかったこと。負けたこと。何も出来なかった自分への事故険悪。
現実から逃げたくなる光景。
耳も目もいらない。そう、思わせるほどの残酷な現実。
京香の代わりになりたい。京香を傷つけたくない。
だけど、いくら想ったって―――現実は変わらない。
「うあぁぁ!」
泣き叫ぶ。そんな状況下、耳に響くのは悪魔の様な呟き。
「これで全員消えた」
その言葉は俺には重く、ただ泣き叫ぶ事しか出来なかった。
最初のコメントを投稿しよう!