始まりはいつも理不尽

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「君たち五人全員ね!」 まるで心を抜かれたマリオネット。意志を持たず。感覚器官を奪われた。 そんな中耳だけは変わらず正常。音を素早く感知。 「回復薬だよ」 側に置かれているのは透明の薬瓶だった。 情け。気遣い。侮辱。 善悪分からない感情の籠もった透明な液体は毒薬にも見える。 一見怪しい薬。それでも――――躊躇うことは無かった。 無心。怒りを露わにすることすら無く。その液体を口にする。 体に変化はまだ訪れない。体は意識をどんどんと奪う。 死ですら怖くない。そう思えるほど精神が怪我を負っている。 大切な人が傷ついた。傷つける事を守れなかった。 「じゃあ、待ってるね」 残ったのは雪辱だけ。 背を向ける葉咲。無防備な背中に傷の一つもつけれないほどの無力。 やがて葉咲は光に包まれ姿を消した。 「くそっ‥‥」 再び静寂になった庭に、泣き叫ぶ声だけが響き渡った――――
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