愛し

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「はぁ‥‥」 夕焼けが山に差し掛かるそんな刻。少し疲れを顔に浮かばせ、ソファーの端っこに腰掛ける。 ソファーには京香。横になって気持ちよさそうに眠っている所を見ると大きな怪我は無いようだ。 経過した時間は数時間。だが、未だ誰も目を覚ましていない。 途中で現れた三人も隣の部屋で寝ているだろう。 生きているのが幸い。不幸中の幸いと言ったところだろうか。 京香やあいつらの顔を見るたびに先ほどの戦いが蘇る。 途中から怒りで我を忘れ、言葉がうろ覚え。でも、最後の言葉だけは覚えている。 『僕は異世界から来た者。君がそのスイッチを押せば、僕のいる世界に招待される』 半信半疑だが、信じると言う概念を捨てることは出来ない。 自分以外の命がかかってるかもしれないから。 視線を京香全体から京香の顔へ。視線を落とすだけでその美貌を瞳が捉える。 柔らかそうなピンクの唇。閉じられた瞳から伸びる睫毛(まつげ)は異常なほど長い。 艶のある黒髪は人を魅了することが出来るほど綺麗で。 本当に何気なく。無意識の内に。 気づけば、その黒髪に手を伸ばしていた。 柔らかい、さらさらとした感触が指先を撫でる。 本当に顔も性格も俺からしたら完璧で。きっちりしているとか。真面目とかでは無くて。 人を引きつけるような。そんな女性で。 幼なじみじゃなかったら間違いなく縁がない、高嶺の存在だったと思う。 窓から差し込む夕焼けの光が京香の黒髪をオレンジに染める。
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