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「心配したんだよ‥‥」
第一声は俺の心臓を締め付ける。
「ボロボロになって。それなのに意地張って頑張って」
京香の為にしたことが逆に京香を苦しめていた。そんな事実に胸が痛む。
でも、間違ったとは思わない。あの時。あの場所で。俺が意地を見せなければ、京香を失っていたかもしれないから。
その気持ちの仰せるままに戦った結果、敗北。惨めながらも失うことだけは避けられたのはただの敵からの情けでしかない。
「りゅーくんがいなくなっちゃうんじゃないかって、怖かった」
思考は京香の言葉によって一気に引き戻される。
涙声で。か弱い声で呟く京香の声が必死に気持ちを訴えてくる。
俺の中の京香は殆どか笑顔で。普段、弱いところを見せなくて。そんな、京香がここまでなるほどの心配をかけたんだ。
「ほんとよかった‥‥」
締め付ける力は一層強まり、自分のとは対極の位置にある京香の心音が伝わってくる。
心音を感じ取った瞬間。急激に心拍数が上がり体が火照りだした。
抱きしめられて。心配されて。弱々しい京香を見て。
自分の想いに気づく。
ああ。そうか。
俺はやっぱり――――
京香が好きなんだ。
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