愛し

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近すぎて気がつかなかった思い。いや、どこかで自分自身で否定していたのかもしれない。 抱きしめ返しても何の違和感もない現状。なのに手を回すことも出来ない。 自分の性格がとことん嫌になる。 気持ちに気づくだけで、全ての行動に下心が裏付けされているようかな気分だ。 チャンスが目の前にある。 自分に何度言い聞かせても体は静止を保ち命令通りに動かない。 やがて、十分な時間を有した京香は密着してた体を離した。 名残惜しい。そんな気持ちと少しの安堵が混ざり合う。 「ありがとね。守ってくれて」 夕焼けは山の裏に隠れ、入れ替わるように月の光がリビングを薄暗くも照らす。 朧気だが表情には笑みが零れているように感じ取れた。 真っ黒い大きな瞳は僅かに潤んでいて。それが逆に輝いて見えて。 視線が交差すれば、吸い込まれるかのように目を反らせなくなる。 包容が解け緊張がほぐれたからか、はたまたその場の雰囲気によるものか。 先ほどの臆病な自分が嘘のように今ならいえる気がした。
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