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布団をめくる時に見える寝間着姿。水玉模様の可愛らしい寝間着。
それさえも見てはいけないような、異様な光景にすら見えてくるのだから不思議だ。
想いはいくらでもある。聞きたいことも。考えることも。
だけど今は何も考えたくて。考えれば考えるほど精神を追い詰めることは目に見えていて。
それから逃れるように、京香に背を向け横になった。
京香の気配や髪の匂いが五感をくすぶり、細胞を活発にさせていく。
「寝れる気がしない‥‥」
そんな呟きも京香の寝息と共に薄暗い空間の中に沈んでいく。
体の節々が戦いで傷んでいる。だが、京香を見るたびに比べ物にならないような、痛みが体の内側を走っていた。
なんでだろう。
瞳から透明な液体が溢れ出し頬を濡らした。
拭うも拭うも透明な液体は止まることを知らずやがて枕元を濡らす。
胸が締め付けられるような感覚に陥(おちい)り呼吸が少し苦しくなる。
本当の痛みとはこの事なのか。現実はそう上手くは無かった。
思いをぶつけるのが最終地点じゃないことを知った。
こんな数時間で好きだった人を潔く諦めれるほど出来た人間じゃない。
なのに―――
『ごめんね。りゅーくんをそう言う風には見れない』
京香を好きでいることすら拒絶されたんだ。
手を伸ばせば届くこの距離。それが無限にも感じる。
止まることの知らない涙で頬と枕を濡らしたまま、長い長い夜はゆっくりと明けていく――――
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