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Act.02:開始。
俺はこの歳に至るまで、冷静を常に張りつけて生きてきた。それは暗部にとって必要不可欠な事。夜の裏側へと身を投じては生死の境目に存在し、激しくも静かな生存競争を繰り広げる世界の中、何事にも冷静を保ててきた(はず)。その日々がこの瞬間、崩れそうな一大事が訪れている。
「ハッ、笑わせんなよ」
何処だよここ。
と、自問してみる。無論自答できるはずもないが別に記憶喪失になったわけじゃない。それはそれでいろいろと美味しいだろうが生憎そういうパーティはない。正直言えば笑える状況ではなく、考えれば考える程イライラが募るばかり。
「取り敢えず…出るか」
立ち上がって、辺りを見渡しながら歩き出す。言うのを忘れていたが俺が現在いる場所は森の中。ここまではよしとしよう。しかし…任務に出た時は夜だったはずだ。やたらバカでかくて丸い月が頭上にいたのを覚えている。だが今は月はなく、代わりに木々の間からは太陽がさも当たり前の様に晴れた茜色の空に昇っているのが見える。
「………野郎、何してくれやがった…!」
沸き上がる殺意を露にしつつ、普段あまり使わない脳をフル回転させて数分前の記憶を巻き戻した。
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