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「に、逃げろッ!妖怪だァ…!!」
突然どこからともなく叫び声が響き渡り、人と言う人の波がドッと通りすぎて行く。
男共が言っていた妖怪?がいるなら、噂程にもなるその三蔵様とか呼ばれる奴も見れるかもしれない。これはもう(怖くはないが)怖いもの見たさと言うものだ。瞬時に判断した俺はその流れに逆らい最初に悲鳴の聞こえた場所に向かった。いっちょ気晴らしの散歩でもしてみようか。
「それ以上近づくなよ!
じゃねえとコイツの首が刎ねちまうぜェ!!」
「!発見」
オマケで人質&ベタな展開付き。
ああいう展開になったんだから、たまたま逃げ遅れた人間を見つけて捕まえた。という所だろうか。尖った耳をもった(見た目的に)妖怪が必死な様子で人質の首筋に刃物をあてがって叫んでいるのが屋根の上からでも伺える。追い詰められてるように見えなくもない。
「どうやら…紅孩児の差し金じゃねえようだな」
「ええ。どうします?」
「ったりまえ、ボコるが勝ちっ!」
「それを言うなら“逃げるが勝ち”だろーがバカ猿」
「んだとぉ!?」
「テメェ等状況ってのを分かってんのかァア!!」
今だけアイツ(妖怪)に同情してぇな。いやさせろ。
だが流石というべきか。あの色彩豊かな面々は、会話をしあいながらもその目は虎視眈々と相手の隙を狙っているように視線を逸らさない。特にあの金髪。射ぬかんばかりの眼光は静かな殺意を写し、それを見た俺の全身に武者震いが走った。その事に気付き、無意識に口角が上がる。
「んの、馬鹿にしやがって!!」
「「「「!!」」」」
立ち向かって行くと思いきや逃げる妖怪。まぁ4対1なら妥当な行動だと言える。がしかし妖怪に一つ尋ねてみたい。
……何故こっちに飛んで来る。
「ちょっ、そこの兄ちゃん!そいつ捕まえてくれ!!」
「…何で」
「いーからッ」
ほら言わんこっちゃない。
茶髪のやけに童顔な奴に言われるがまま今さっき過ぎ去った妖怪を追い掛ける。ハッ、俺の持久力ナメんなよ。絶対捕まえてやる。
「…待ちやがれゴラァアァ!」
「!ギャーーッ」
…鬼ごっこはすぐに終了した。
後に人質とされていた人は無傷のままで無事解放され、妖怪はというと『鬼だ。鬼がいる』とアワをふきながら昇って逝ったとかなんとか。御愁傷様である。
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