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「!!、………?」
ザワリ。そんな効果音が似合うくらいに空気が揺れ、思わず千薙は飛び起きた。窓の外を用心深く伺うが、闇が覆うばかりで辺りは良く見えない。しかし何処か騒がしい。木の葉が動いていないので風があるでもない。ましてや人影があるでもない。それなのに騒がしいのだ。まるで音の無い雑音がけたたましく鳴りながら空気中を蛇行しているような…。
「(──何か…来る)」
クナイを持つ手に力がこもる。
途端、強引に突き破られた窓ガラス。既んでの所で避けた千薙は影に身を潜め、部屋の中へと入ってきた者の正体を確認する。
そいつは、昼頃に見た妖怪と同じだった。顔こそ違うが尖った耳を持っているのが何よりの証拠。後、額の端に刺青らしき文様状の痣が見られる。
「おいおい、居るのは分かってんだぞー!隠れてないで俺と遊ぼうぜッッ」
「(誰がテメェと遊ぶかバカ)」
つーか安眠妨害しやがってこの能ナシが。
あっちが仕掛けてきやがったんだ。これからする行為は立派な正当防衛だと言い張ってみよう。
ひとしきり部屋を荒らした妖怪がこちらに背を向ける。それをチャンスとばかりに近づき、首に腕を回した。
「お前、眼色…禁忌の──」
目を見開いて藻掻く妖怪の首を、無遠慮に力任せに捻る。行動に合わせて、ゴキッと骨の折れる不気味な音。その音と言葉を最後に、妖怪から力が抜けた。
「ヒャッハー!隙ありィ!!」
「バカにすんな…よっ!」
「ぶっ」
次は嬉々とした声が背後から飛んできた。至って冷静な千薙は、ベッドのシーツを引っ掴むなり妖怪に向かってぶん投げた。ただし、顔中心的に。
見事に命中して、視界を遮られた2人目は期待通りだらしなく叫び、地面へと倒れこむ。その妖怪に馬乗りになった千薙がその心臓一直線にクナイを振り下ろそうとした時だった──
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