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フクロウだけが起きている夜。
青く輝く満月が畑を照らしていた。
見ていたのは、フクロウと、それを肩にとめているくたびれたカカシだけ。
《ホッホウ》
フクロウが一声鳴いた。
……いや、違った……
声は、カカシの見ている畑の片隅。
今は使われていない荒れ地からだ。
《ほーほっほーぅ!》
声は、一人では無いようだ。
赤い帽子の小さな人が数人、切り株の上で踊っている。
《今年は豊作か?》
と、誰かが問えば
《もちろん!!》
と全員が答え、そして、さも楽しそうに笑うのだった。
いつの間にか彼らの前には、ビールの樽が置かれ、腰までのびた白い髭をたっぷりと泡に浸していた。
《ほっほー!来月は、川向かいで牛のお産じゃあ!》
《ほーっほ!あそこにゃ何時も世話になってる、みんな祈らなにゃなあ!》
そうだそうだと全員がはやすと、中の一人がどこからかビスケットを取り出した。
そして、月へぽーん!と思い切り投げ飛ばす。
《ほっほー!オツキさん!よろしくな~!》
続いて皆が一斉に唱和すると、ビスケットは、流れ星へと変わった。
……やがて、空が白みはじめる頃、一番鶏が寝ぼけ眼で朝を告げると、いつの間にか彼らの姿は跡形もなかった。
彼らの事を知っているのは……
フクロウと……
カカシだけ……
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