-新月の夜-

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足元すら見えない闇が満ちていた。 そこに居たのは闇夜を飛べるコウモリだけ。 ひゅうと風が吹き抜けて首をすくめたコウモリは、近くの枝で翼を休めた。 ひそひそ…… しゃがれた声が聞こえる…… …ひそひそ…… 《キキッ!闇の時間じゃ……》 ……ひそひそ…… 《ヒッヒッヒ、明後日は、山の麓の婆さんじゃ……半月後には……》 パチリと何かを切る音がする。 《シューシュー。83の結び目と8つのよじれじゃ…》 ……ひそひそ…… 《ヒッヒッヒ、じゅうぶんじゃ……》 果たして声は、何なのか…… 《キキッ!もう時間じゃ》 《ヒッヒッヒ、仕方ない……》 《シューシュー。また闇の時間に……》 …ひそひそ……… ……ひそひそ…… ………ひそひそ… やがて、空が白みはじめると、声は溶けるように消えた。 聞いていたのは…… 闇夜を飛んだコウモリだけ……
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