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「………いや、桜美は綺麗だ…桜があると、更に引き立つ……」
「…ありがとうございます……志乃介様、もうお話にならないで下さい…傷に障ります」
「………話そうが話すまいが、俺はもうそう長くはないだろう…それなら、話をさせてくれ……」
「志乃介様、何て事を…この血が止まりさえすれば、きっと大丈夫です」
桜美は再び着物の裾を破ると、出来た布で止血をしていく。
「………いや、この出血では……」
「いいえ!志乃介様は助かります!志乃介様は、助からなければなりません!!」
桜美は首を左右に振りながらそう言い放つ。
「……約束、したじゃありませんか…共に、幸せになろうと………」
「………桜美…」
「志乃介様、私は嫌ですよ?ここまで連れてこられて一人にされるなんて………」
桜美は涙を流しながら俯く。目から零れた涙は、志乃介の手に次々と落ちていく。
「………今日は、桜美を泣かせてばかりだな」
志乃介が力のない笑みを浮かべる。
「………そして、俺は…更に桜美を泣かせる事になるな……」
志乃介は桜美に握られていた手を離すと、桜美の頬を伝う涙を拭う。
「…志乃介様…?」
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