プロローグ

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「………桜美…約束を守れなくて、すまない……桜美を、ここに置いて、先に逝く事を、許してくれ………愛している……桜美…」 涙を拭っていた志乃介の手が、地面にパタリと落ちる。 「………志乃介様…?志乃介様!?」 桜美がどんなに名前を呼んでも、どんなに体を強く揺すっても、志乃介が再び目を覚ます事はなかった。 「嫌…嫌です!志乃介様…桜美を、こんなところに置いて一人で逝ってしまうなんて………いやぁぁ!!」 強い風が吹き抜け、桜の花を空へ舞い散らせる。桜の下で命を散らせた志乃介を送り出すかのように…桜美は命を無くし、抜け殻となった志乃介の体に縋り、永い時間泣き続けた。
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