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美桜には毎日欠かさず行っている日課がある。家の近くにある広い敷地を持った運動公園に桜の木を見に行く事だ。
しかし、美桜は表通りで満開に咲き誇っている桜並木には見向きもせず、運動公園の外れにある小さな森へ入っていく。森としての規模は小さいものの、そこにそびえる木はどれも立派な大木で、まるで人の出入りを拒んでいるように思える程だった。
誰も近付かないような森の中を、美桜は迷うことなくどんどん奥へ入っていく。やがて森が開け、目の前に大きな桜の木が現れた。その桜は、周りを巨木に囲まれ、日の光を遮られながらも表通りに咲いていたどの桜よりも立派で一際輝いて見えた。
「ここに来ると、あの時の事を思い出します。ちょうどここで、あなたと私は………」
美桜が桜の根元にしゃがみ込むと、地面をそっと撫でる。
「志乃介様…あなたは、今どこで何をなさっているのですか?その場所は、幸せですか?」
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