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美桜の頬を涙が伝う。その隣を、強い風が吹き抜け、見事に咲き誇った桜を散らせていった。散った桜の行く先を目で追っていくと、そこにはいつからそこにいたのか男が一人立っていた。着ている制服から、美桜と同じ鳳高校らしいということが分かる。
「へぇ~…表通りの桜も綺麗だったけど、まさかこんなに立派な桜があったなんてな……」
美桜は近付いてくる男に泣いている事がバレないように涙を拭うと、すぐに男に目をやる。すると、美桜は驚いたように目を見開く。
「あ、あなたは…!」
そこには、美桜の中に残る桜美の記憶に焼き付く愛しい相手の顔があった。
「ん?俺?俺は………雨宮。今日からこの街にある鳳高校に通うことになってるんだけど、その前に色々散策してみようと思ってね」
「鳳高校って、私と同じ高校…雨宮、君?あの、下の名前は?」
「うっ…し、下の名前は……その………」
雨宮と名乗った男は下の名前を聞かれた途端に俯いてしまう。
「お、俺の名前を聞いたら、絶対に笑うよ?」
「笑ったりしないわ…だから教えて?雨宮…何?」
「雨宮………志乃、だよ…これ言うとよく笑われるんだ、女の子みたいな名前だって……」
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