第一章・巡る運命(さだめ)

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「志乃…それが、あなたの名前?」 「そ、そうだよ!何か文句でもあるのか?文句を言われてもどうしようもないけどさ…」 困ったような表情を浮かべる志乃に、昔見た志乃介の面影が見え隠れするのを見て、美桜は顔を俯ける。 『志乃…顔も、志乃介様にそっくり……それじゃあ、この人が志乃介様の………』 「あっ…もしかして、笑い堪えてる?それならいっそ大笑いしてくれた方が……」 不意に美桜は顔を上げる。その顔には、優しい笑みが浮かんでいた。 「ううん、笑ってなんかないよ。名前は親が子供にくれる最初の愛情なんだよ?それを、笑ったりしないわ」 「………俺の名前を聞いてバカにしなかった人、初めてだよ…」 驚きつつも、志乃は嬉しそうな笑みを浮かべている。 『…笑っている顔も、志乃介様だわ……やっぱり、あなたは………』 「…ねぇ、どうかした?」 「えっ…?」 「いや、泣いてるから…俺、なんか変な事を言ったつもりはないんだけど………」 志乃の言葉に美桜が慌てて自分の頬に触れると、いつの間に泣いていたのか涙が伝っていた。美桜はすぐに目を拭うと、志乃に背を向ける。
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