4人が本棚に入れています
本棚に追加
「志乃…それが、あなたの名前?」
「そ、そうだよ!何か文句でもあるのか?文句を言われてもどうしようもないけどさ…」
困ったような表情を浮かべる志乃に、昔見た志乃介の面影が見え隠れするのを見て、美桜は顔を俯ける。
『志乃…顔も、志乃介様にそっくり……それじゃあ、この人が志乃介様の………』
「あっ…もしかして、笑い堪えてる?それならいっそ大笑いしてくれた方が……」
不意に美桜は顔を上げる。その顔には、優しい笑みが浮かんでいた。
「ううん、笑ってなんかないよ。名前は親が子供にくれる最初の愛情なんだよ?それを、笑ったりしないわ」
「………俺の名前を聞いてバカにしなかった人、初めてだよ…」
驚きつつも、志乃は嬉しそうな笑みを浮かべている。
『…笑っている顔も、志乃介様だわ……やっぱり、あなたは………』
「…ねぇ、どうかした?」
「えっ…?」
「いや、泣いてるから…俺、なんか変な事を言ったつもりはないんだけど………」
志乃の言葉に美桜が慌てて自分の頬に触れると、いつの間に泣いていたのか涙が伝っていた。美桜はすぐに目を拭うと、志乃に背を向ける。
最初のコメントを投稿しよう!