第一章・巡る運命(さだめ)

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美桜が自分の教室の戸を開けると、クラスメイト達がそれぞれ雑談を続ける中、一人が美桜の方へ目線を向けた。 「あら、美桜。おはよう。今日は早いじゃない?いつも遅刻ギリギリなのに…」 「あっ、ゆきちゃんおはよう!」 美桜は嬉しそうな表情を浮かべながら“ゆきちゃん”と呼んだ少女の後ろに持っていた鞄を置く。 「…随分と嬉しそうね…幼い時から夢見てきた白馬の王子様にでも会ったのかしら?」 「えへへ…まぁね」 彼女の名前は雅楽代雪菜(うたしろせつな)。雅楽代家と言えばこの街では1、2を争う程の名家であり、雪菜はその家のお嬢様にして次期当主とも言われている。当然周りは雪菜を特別視、または特別扱いする者が多いのだが、雪菜は特別扱いされることを嫌っている。美桜はそんな自分を受け入れ、特別ではない普通の存在として見てくれる数少ない内の一人で、付き合いは幼稚園の頃からと10年以上の付き合いである。雪菜はよくただの腐れ縁だと言っているが、内心では美桜を友達以上の存在…親友として大切にしている。
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