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「…すまない、お前を泣かせるつもりではなかった。ただ、協力してくれたお前の友のためにも、俺達は生きなければならない…そのためには、まず逃げ切らねば………」
「志乃介様…」
その時、志乃介が桜美を抱き締める。
「俺にはお前しかいない…だから、危険を承知で花街からお前を連れ出した………桜美、ついてきてくれるか?」
その言葉に、桜美は志乃介から体を離して優しく微笑む。
「ここまで来てついてきてくれるかなんて…野暮な質問です。断るつもりなら、昨日の時点でお断りしておりますわ」
「では…」
「はい、ついていきます…志乃介様の行くところ、どこまでも………志乃介様こそ、私で良いんですか?私は、花街の遊女…卑しい身分の女です。そんな私で……」
「身分なんて関係ない…何度同じ事を言わせた?それに言っただろう、俺にはお前しかいないと………良くなければ、俺もお断りしているところだ……桜美、共に行こう。そして、俺達を知っている者がいない地で、共に暮らそう………」
「志乃介様…」
二人の唇が重なり合おうとしたその時、木々の陰から二人を狙う矢が放たれる。その事に気が付いた志乃介が、桜美を庇って背中に矢を受けてしまった。
「志乃介様っ!?」
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