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涙を流しながら訴える桜美の声に、志乃介は力無く首を左右に振り、どんなに腕を刺されようとも決して手を離す事はなかった。
「しぶといな…お前を痛めつけるのも飽きてきたし、そろそろ楽にしてやるよ…あの世で自分がした事がいかに愚かだったか、たっぷりと後悔するが良い!!」
八雲の握る脇差の剣先が志乃介の首筋を捉え、首筋に向かって勢い良く降ろされる。刹那、短く呻くような声が聞こえた。
「…お、うみ……何を………」
「志乃介様は、私を命懸けで遊女屋から助けて下さった…だから、今度は私が志乃介様を助ける!」
桜美の手には懐刀が握られており、その懐刀は八雲の胸に突き刺さっていた。
「八雲…確かにあなたがしていることは正しいのかもしれない……遊女が好きな人と添い遂げるなんて夢のまた夢よ………でも、あなたに志乃介様を殺させはしない…あなたなんかに、私達を引き裂く権利はないわ!」
桜美がそう言い放ちながら懐刀を引き抜くと、八雲は胸から血を噴き出しながら地面に倒れ、そのまま動かなくなる。
「志乃介様っ!!」
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