プロローグ

7/13
前へ
/310ページ
次へ
桜美が志乃介に駆け寄ると、すぐに志乃介を抱き起こす。見ると、八雲から受けた無数の傷からおびただしい量の血が流れている。 「志乃介様っ!志乃介様っ!!」 「………桜美……大事、ないか…?」 桜美の声に、志乃介はうっすらと目を開けて小さく呟く。 「はい、桜美は無事です。志乃介様…なんて無茶な事を………」 桜美の目から大粒の涙が零れ、志乃介の頬に落ちる。 「…すまない……お前を泣かせるつもりではなかったんだ、本当に………」 「志乃介様、もうお話にならないで下さい…八雲は桜美が仕留めました。ですから、他の追っ手が来ない内に傷の止血をしてここから離れましょう…」 桜美は着物の裾を破くと、その布を志乃介の肩口にキツく縛り付ける。 「………桜美が、仕留めた…?」 「はい、八雲もまさか私が何かしてくるとは思っていなかったのでしょう…手は拘束されていなかったので、懐に隠してあった小刀でつい…八雲の胸を刺してしまいました……」 「そう、だったのか…桜美、お前にそのような仕事をさせたくはなかったが………お前には命を助けられたな……」
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加