4人が本棚に入れています
本棚に追加
森を抜けた瞬間二人を迎えたのは、月明かりに照らされ、まるで花自体が輝きを放っているかのように見える幻想的な桜の木だった。
「まぁ、綺麗…森を抜けたところにこんな場所があったなんて………」
見事に咲き誇る桜に、桜美は感嘆の声を漏らす。
「志乃介様、桜がとても綺麗ですよ?」
自分の肩を借りながら何とか歩いていた志乃介に話しかけたが、志乃介からの反応は返ってこなかった。
「…志乃介様?」
もう一度名前を呼んでみるが、頭をうなだれたまま志乃介はピクリとも動かない。
「…志乃介様!大丈夫ですか!?」
肩から志乃介の腕を外して地面に横たえると、志乃介の顔は血の気を失い、まるで死人のように真っ青になっていた。刺された腕からは、簡易的だが止血をしていたものの未だに血が流れ続けている。
「志乃介様!嫌です…桜美を、一人にしないで下さい!!」
志乃介の体に縋る桜美の横を桜の花びらが一枚通り、志乃介の手に落ちる。すると、志乃介はうっすらと目を開ける。
「………桜美、か…?ここは、どこだ…?」
最初のコメントを投稿しよう!