「野球なんかやりたくない」

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「甘い甘い」 「しっかし、これ何球分だ?こんなに打てるかよ」 「なら今から打ちゃいいじゃねぇか。ほら、やってこい」 「……まぁ、ストレス発散ぐらいにはなるか?」 由宇は大量のコインを受けとり、コースに向かう。 100キロ、110キロ……次々と速度の速い方へ由宇は歩を進める。 そして由宇は一番奥のコースで足を止めた。五年前、父親がただの冗談で導入したマシン。 『ただ一人』を除いては誰も打ったことのないマシンだった。 150キロのコースの隣にあるそのコースには『170キロ』と書いてあった。 「あーあ。一日損した……たかがこんなバッティング打ち放題で……」 由宇は金網の戸を開け、コインを投入口に入れて、バットを手にする。 「あー!うらやましいなぁ!この地域一番のレジャースポット!老若男女問わず人気で客足の途絶えないミカミバッティングセンターで打ち放題出来る由宇君は恵まれてるなぁ!」 「うるせー!」 先ほどの言葉をしっかりと聞いていた由彦の茶々を由宇は大声でかきけす。 その間にマシンはアイドリングを終え、第一球を放らんとしている。 170キロのボールとはどんなものなのか? 最早常人の動体視力ではボールか何か認識が難しい。ボール自体の速さはもちろん、スピンの回数も凄まじく、ボールがホップして向かってくる。 野球の経験者でもそうそう打てはしないだろう。何せ、そんなスピードのボールを投げてくる投手を想定した練習など行わないからだ。投げれる人間とまず出会わない。
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