「野球なんかやりたくない」

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由宇は突然向けられた威圧感に少々怯んだ。 「い、いや別に……」 「あっそ。……あった、あった。あんた少しはカバンの中整理しときなさいよね。んじゃ」 咲良は慶介のカバンから目当ての品を見つけ出すと、それを手に取り、そそくさと教室を出ていった。 まるで台風が過ぎ去ったような感覚を感じながら、由宇は教室から出ていく咲良のほっそりとした後ろ姿を眺めた。 「なんか結構強烈だな、あの女」 「そうだな。昔からあんな感じだわ」 慶介は机の上に置かれたカバンを机の横のフックにかけながら言った。 「それに少しキツいぐらいの性格してねぇと男だらけの野球部でやってけねぇよ」 どうやら慶介の話によると咲良は野球部に入ってるらしい。女子で野球部ということはマネージャーをやってるということだろう。 由宇はベンチでふんぞり返って、メガホン片手に選手達を怒鳴ってる咲良しか想像出来なかった。 それではマネージャーではなく監督だな、と思った。しかし、先ほどの印象からすれば甲斐甲斐しく雑務をこなしている咲良などしっくりこない。 「へぇ。なんかそんなイメージねぇな」 「そうか?まぁ、そうかもなぁ」 そこで教室の扉が開かれ、担任の顔が見えて二人の会話は終了した。
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