「野球なんかやりたくない」

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「見学?するわけないだろ。そんなもん」 「照れんなって。ずっと見てたじゃん」 「見てねー」 「見てたって。なぁ、興味あんならちょっとやってみないか。監督には俺から言うからさ。んでそのまま野球部に入っちゃえよ」 爽やかな笑顔で言う慶介に由宇は苛立った。これまでは適当に聞き流していたが、なぜか今はそれが出来なかった。腹のなかがぐるん、と回った感じがした。怒りが沸き起こったのだ。 強豪の野球部なんてものに俺が入れるのかなんてことは火を見るよりも明らかだ。なのにこいつは平然と馬鹿馬鹿しいことを……。由宇のきつい目つきがさらにきつくなった。 ほんとは慶介が野球の出来ない俺を馬鹿にして楽しんでるだけじゃないのか、とすら感じた。 いい加減うんざりだ、と思った瞬間、かねてから気になっていた疑問が怒気を孕んで口から出ていた。 「あのよ。前から聞きたかったんだが、お前はなんで俺をそんな野球部に誘うんだよ?俺はズブの素人だぜ?ウチの野球部に入るのすら難しいだろ。なのになんで誘うんだよ。そんなに雑用係が欲しいのか?もしくはからかってんのか?だとしたら今すぐその金網ぶち破って、てめぇをぶん殴ってやる」 由宇は語気を強めて言った。中々の迫力だった。 当の慶介はというと、由宇がなぜ怒っているのか全く分からず困惑しているようだ。 「からかう?何言ってんだ?俺は本気で誘ってんだよ」 慶介はこめかみを指できながら眉を八の字に曲げた。思い通りの返答が来ず、由宇はさらに熱くなった。 「じゃあ、なんだってんだよ!」 「いやまぁ、一番の理由は―――お前に野球の才能があるからだ」 「……は?」 由宇は口を開けて、ポカンとしてしまった。 自分に野球の、才能……?
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