「野球なんかやりたくない」

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「うへ。嫌になんねーのかよ」 「なんないなー。お前もやってみればわかるさ」 由宇はしかめっ面で言葉を返した。 「野球なんかやりたくない」 慶介はいつも通りの由宇の返答にやれやれ、と言った調子で肩をすくめた。 「そういや親父さんは?」 「ん?ああ、親戚のおばさんとこの弁当屋のヘルプ。ぎっくり腰やっちゃったんだとさ」 「大変だな」 「そんな大事じゃないとは思うけどな。ほら、チケット持ってさっさと帰れ」 由宇は机の引き出しからチケットの束を取り出し、数えながら慶介に渡す。 ミカミバッティングセンターではサービスチケットというものがあり、1000円で、100円のメダル一枚と交換できるチケットを11枚を購入することができる。 1000円で100円分お得なこの券は常連には人気であった。 慶介は由宇のしかめっ面に苦笑いしながら財布から2000円を出して、チケットを受け取った。 そして、すぐチケットを5枚ちぎって由宇に差し出した。ちなみに一枚10球である。 「ほんとに飽きないのかよ」 「全然飽きないって」 由宇は呆れたようにため息をついてから、引き出しの奥にある透明なケースに大量に入っているメダルから5枚取って慶介に渡す。 ミカミバッティングセンターはメダルを購入する方式になっていて、普段は販売機で買うのだが、チケットの場合はカウンターで交換になる。 「さんきゅ」 慶介は受け取った右手を軽く上げると、真っすぐ奥から二番目のコースに向かっていった。
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