三島明人

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「ヒドゥンサバイバル」 もう一度その名前をつぶやく。 「全ての可能性を否定するな」 これももう一度。 「僕は人の感情を知る為には、自らの命もいとわない。それすらも、君達の道徳では許せない事なんだろう」 警官達は身動きできなかった。 化け物。 睨みだけで二人を凍らせる三島は正に化け物そのものだった。 「僕が殺人を犯した事は決して間違っていない。むしろ究極の倫理とも呼べる人間的な所業である。これから僕のヒドゥンサバイバルで、皆が身を以て知るだろう。人間の感情を深く知る事が出来るだろう」 そのまとった空気に怯え、二人には事 の成り行きを見ている事しか出来なかった。 「僕がこうする事も大切なプロセスだ。ゲームを始め、いずれは互いの感情を知る為のね。それでは最初のゲームで再びお会いしましょう」 おどけたように片目を瞑った後、三島は引き金を引いた。 乾いた発砲音。 意を決して突入してから、ものの五分弱。 それが、天才三島明人が死に至るまでの時間だった。
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