ヒドゥンサバイバル

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「ねえ、かっくん、ヒドゥンサバイバルの三巻見た?」 同じ部活の梶井まりが男女の間すらも気にせずに、俺と肩を組んでくる。 「また、その話題か。あんなもの読むかよ、趣味悪い」 「趣味、悪いかなあ。っていうか、書いた人と作品の面白さは別問題じゃん?」 作者は先日自殺した、かの有名なドクター三島。 稀代の発明家にして殺人鬼で、先日までニュースや雑誌を賑わせていた。 その三島が執筆したミステリー小説は、 科学者が発明したSFチックな道具で犯罪を犯していくというものだった。 例えば、証拠が絶対に残らない毒薬。 これを使う事により、ミステリーではお約束になる検死の結果などが推理材料として成り立たなくなり、読者は別の数少ない情報から未知の道具を用いた犯行の推理を要求される。 変わったミステリーが話題の小説だ。 「ミステリー小説ってのは、理論的に犯行手段を見抜いて、犯人を追い詰めるのを楽しむもんだろ。現実にない発明品だなんて、邪道だ」 「楽しければ別にいいと思うんだけどな。理屈ぽく考えて楽しめなくなるのって、損じゃない?」 「悪趣味じゃなきゃ、それでも楽しめたろうさ」
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