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白黒の少女の背中を見送ってまた一つ溜息をする。
なんでもいいから会話をすべきだったと自分に呆れた。
「けほっ、けほっ。・・・今日は調子が悪いのかしら」
「白黒・・・・。まったく、あの門番はなにしているのかしら」
「あら、あの娘、また来ていたのね」
陽が当らないテラスで紅魔館の主人とメイド長は白黒の少女が本を抱えながら屋敷を徘徊しているのを眺めていた。
「お嬢様申し訳ございません。今すぐにでも」
「いいのよ、咲夜。今は静かに貴女の淹れてくれた紅茶を飲んでいたいわ」
淹れたばかりの紅茶を啜りながらレミリアは微笑む。その表情に心揺らされた咲夜は必死に平常心を保とうと空いていたカップに紅茶を入れ溢れさせていた。
レミリアは横目でそれを見ながらお菓子を小さな口に運んだ。
「・・・今日は涼しいわね」
風はないが冷たい空気を感じていた。
「さて、帰る前にどっかよろうかな」
呑気に手に入れた数冊の本を抱えて紅魔館の庭を通っていた魔理沙の目の前に驚くべき相手が立ち塞がる。
「貴女また勝手にお屋敷に侵入しましたね」
紅魔館の門番を務める紅美鈴が居眠りせず魔理沙の前に表れたのだ。来る時は心地よさそうに寝ていたが。
「今回は許しませんよ」
「おいおい。それよりか頭大丈夫か? ナイフ刺さってるぞ」
「ええ、起きた時になぜか刺さっていたんですよ。ですが犯人は分かってます。あのメイド長です!!」
「じゃあ、私には用はないな。メイド長さんによろしくなー」
「はい、分かりました。って、今回は許さないと言いましたよ!!」
「面倒だ。さっさと帰らせてもらうよ」
門の外に出て箒に跨ろうとした瞬間、大きな地震が起きた。
「なっ!! おわわわわわわ」
その揺れは長く、上手く立てない程だ。
そして轟音が鼓膜を破ろうと襲いかかった。
咄嗟の防衛反応で耳を塞ぎ、目を閉じて耐えようとしたが魔理沙は吹き飛ばされた。
帽子を抑えながら体勢を整えた魔理沙の目の前には絶壁が立っていた。
「なんだこりゃ」
無意識に出た言葉はあまりの出来事に魔理沙を放心させた。
今までいた紅魔館が巨大な氷塊へと姿を変えていたのだから。
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