始まりは気まぐれから

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 いつものように店に並べる道具を拾っているついでに霖之助は湖の畔で釣りを楽しんでいた。  この湖には巨大魚が釣れるというのを聞いていたので偶然にも途中で釣り竿が落ちていたのも併せ気分転換にもいいだろうと思い腰を下ろしてのんびりと娯楽に浸っていた。  霧のせいで視界は良くないが遠くで少女らしき笑い声が聞こえる。  この湖には吸血鬼の館があったり妖精が住んでいたりと結構賑やかな所だったなと思い出していた。  その声がだんだんと近づいてきた。  カエルが必死になって飛び跳ねながら逃げていた。  逃げ遅れるカエルは一匹ずつ最後尾から氷漬けになっていく、なんともホラーな映像だった。 「あははははは、どこへ行くんだ―。逃げても無駄だぞー」  ゲロゲロと必死に逃げていたカエルも最後の一匹が飛び跳ねた最中に氷漬けにされ地面に悲しくもコロコロと転がった。その表情は恐怖に引き攣った顔のように見えた。  冷気を纏った妖精がフヨフヨとこちらへ向かってきた。 「お前も氷漬けにしてやろうか?」 「いや、遠慮しとくよ。今はゆっくりと釣りを楽しみたいからね」 「ここ、あんま魚いないよ」 「釣りはただ釣るだけが目的じゃないよ。釣る過程も楽しむのが釣りなんだよ」 「へぇ、釣りってスゴイんだなぁ」  この妖精も暇なのか周りをクルクル浮遊していて釣りに集中できない。妖精の周りは寒く気温と体温が下がっているのをなんとなく感じていた。 「なぁ、それなんだ?」 「ん、それって?」 「それだよ。その丸いの」  妖精はさっき拾った丸い綺麗な石に興味を持ったらしい。 「これ欲しいのか?」 「欲しい、きれーだから大ちゃん喜ぶかなって」  少し悩む。結構綺麗だから高く売れるかもと思ったからだ。  しかし綺麗だと言っても形が見事な球体で色艶は宝石とはいえないただ磨いた石なのだ。  まぁ、嘘をつけばいくらでもなるが。
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