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「八雲・・・紫。こんな場所に何の用だい?」
「ふふふ、何か面白い事がありそうな気がして来たのよ」
「そうかい。なら、人の娯楽の邪魔だけはしないでもらいたいよ」
「貴方には用はないわ。そこの妖精に用があるのよ」
隣の妖精に指差して近づいてきた。
妖精の持っている石に視線を向け一瞬だけ薄ら笑いをしたのが見えた。
「素晴らしいモノをもっているわね」
「これか、この眼鏡がくれたんだ。もう、あたいのだから見せるだけだ」
「そう、残念」
その表情は一切残念そうではなかった。逆に自分の求めていた玩具を見つけてどう遊ぼうとするかのような楽しそうな感じに見て取れた。
「ねぇ貴女は強くなりたい?」
「あたいはさいきょーなんだから。でも強さをくれるんだって言うなら貰ってあげる」
「ならこれを貴女にあげるわ」
紫は自ら作りだした空間の狭間から一冊の本を取りだした。霖之助はその本に見覚えがあったような気がしたが思い出せなかった。
「あたいはそんなのいらない」
「まぁ、そんなこと言わずに読んで見なさい」
隣からその本を覗くが真っ白で何も書かれていなかった。それを妖精は、おお、と言いながら読む・・・いや、見ていた。
それを見ていた紫も扇子を口に当て笑っていた。
なにかこの本に細工がしてあるようだ。しかし残念ながら霖之助には見ても読めないし理解できないためこの本が一体何か分からなかった。
「この本は一体なんだ? 見た事あるような気がするんだが」
「・・・気のせいよ」
鼻で笑って返答したのを見て霖之助は自分が忘れているだけで絶対に見覚えがあるものだと確信した。
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