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「うおおおおおお!!!」
妖精の驚嘆に少し驚いたが本を齧りつく様に見入っている。この本は先程から真っ白なだけのページしかないのだがどうやら妖精には何か見えているようだ。
「――貴女には聞こえるのね」
「聞こえる? 君にもこの本の内容が分かるのかい?」
「いえ、私にはその本はただの白紙の紙を折り合わせた、ただの分厚いだけの紙クズにしか見えないわ」
「なら、この妖精はなにを見てるんだ?」
「その本の意思よ。文字が見えているかもしれないし感情を読んでいるかもしれない。詳しく知りたいけど妖精って知能が低いのばかりだからそういう説明はできそうもないわ。でも、反応しているということは何かしらこの本から感じているってことなのよ」
八雲紫の言っていることはよく理解できなかったがこの本には特別な何かがあるみたいだ。
しかし、運が悪い。
一人でのんびりと釣りを楽しもうと思っていたが妖精に懐かれ八雲紫と遭遇という否応にも事件に巻き込まれそうな気がしてならない。
その前に帰ろう。
「では、ここでお暇させてもらうよ」
「あら、もう帰ってしまうのかしら。これから面白いことが起こるというのに」
「だから帰るのさ。厄介事になる前にね。店もあるし」
「そう、残念」
今度の残念は本当に残念そうな顔をしていた。玩具の披露会は御免だよ。
さっさと釣り具を片付ける。
妖精は本に集中してたので無言で別れを告げ八雲紫を横目で一瞬だけ見てその場を去った。
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