始まり

2/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
人一人が通れる程度のスペースを空け、目まぐるしい程にモニターの配置された広く薄暗い部屋。 「……A班、C班共に生体反応消失。……全滅です」 その内の一つニターの赤い光が"DEATH"の文字を描き、それを見ていた白衣の男が無機質な声でそう告げる。 「……ターゲットは?」 その後ろで、ヨレヨレの白衣に身を包み、ボロボロのズボンに下駄を履いた厳つい、髭面の老人が腕を組みながら口を開く。 「既にロストしました。衛星に追跡させますが、恐らく無駄かと……」 その言葉に老人は小さく舌打ちする。 「所詮はコストと人体の安全性を考慮した下らん量産品(鉄クズ)。数を揃えてこのザマか」 つまらなそうに大きなため息が一つ。 ボリボリと頭を掻く老人は白衣の男に背を向けながら、老人は言葉を発する。 「リストにある人間(ヤツ)を連れてこい。最早、量産品専用の志願者(デク)などいらん。必要なのは私の最高傑作を使いこなす、選ばれた人間だけだ」 退屈そうにそう言いながらドアを空け、老人は部屋から出る。 広い部屋に一人となった白衣の男は、別のモニターに設置されたマイクへと移動し、指示を出す。 「回収班は迅速に機械部品を回収。それ以外は手頃な場所に埋めておけ」 『……了解』 ────物語はここから始まる。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!