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時刻午後9時00分
数多のネオンと街灯が道を歩く人と、アスファルトの地面を照らしている繁華街。
ある者は無言で、ある者は仲間と盛り上がりながら、またある者は異性と肩を寄せ合いながら各々の目的地へと歩いていく。
そんな繁華街の路地裏に────
「オラどぉしたぁっ!? 雁首そろえてその程度かよっ!!」
傷物のジーンズと半袖のTシャツを着た青年が威嚇するように吼える。
その足下には、亡者のような呻きを上げながら倒れ伏す数名の男達。
表通りの華やかさとはかけ離れた、薄暗さと静寂の路地裏に一時的な騒動が起きていた。
天を衝くような形の黒髪、猛禽類を思わせるような鋭い眼、整った鼻筋。
眼前の相手に対し、挑発的に嘲笑(わら)う青年は、その表情一つが画になりそうな程に美しかった。
「ク、クソッ……! カタギのガキがッ!」
それに対する柄の悪いスーツを着た男は、憎々し気に青年を睨みながらも、口から言葉を洩らすのみである。
連れて来た喧嘩自慢の部下五人は尽(ことごと)く叩き伏せられ、残るは自分のみ。
ただ怯むしか出来ない男を見かねた青年は、表情をそのままに
「コレに懲りたなら返済をゆっくり待つ事だな。踏み倒しはしねぇからもう帰れ」
と告げる。
しかし、コレが男の逆鱗に触れた。
「ナメてんじゃねぇよぉッ!!」
念のため懐に隠していた匕首(あいくち)を腰に構え、叫びながら青年へと突き進む。
薄暗い路地裏。
二つの人影が密着しそうな程に近付いて止まる。
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