第3章

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 ふと、夢のことを思い出した。  夢で彼は同じような場所から血を出してなかった?  そう思ったとたん、体に痛みが走り、一瞬だけ顔をしかめてしまう。 「ほぅれ、痛むやろ? はよ、横になったらええ」 「……はい」  女性に背中を支えられながら、また横になると、痛みはずいぶんと緩やかになった。 「うちは、富沢 ちよ。あんさんの名は?」 「……淡雪です。松坂 淡雪。淡い雪って書きます」 「淡雪…随分綺麗な名やな?」 「ありがとうございます」  私の名前を聞くと、ちよさんがにっこりと笑う。  名前を誉められるのは嬉しい。
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