第1章

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 真っ白な世界。  たった今、自分の目の前で起きたことを私は無音の世界で、その様子を見下ろしている。  思考はすべてを拒絶し、体は痺れたように動かない。  私の足元では男がうつ伏せに倒れ、そこを中心に赤いモノが滲み出すように広がり出す。  その赤いモノは、すべての世界を侵食するように小刻みに震える足元のすぐ側まで広がってきた。 「……っ!」  無意識に、赤いモノから逃げようと一歩あとずさった。  目の前に広がる赤いモノが何なのか、うまく回らない思考であってもわかる。  流れる大量の血。  男は私の目の前で突然、血を噴出して倒れた……。
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