第2章

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 私の名前は松坂 淡雪。  高校3年の17歳。  うっすら積もった雪の日に生まれたから淡雪。  安易なつけ方だし、古風な名前だけど、私はわりと気に入っている。  うちは剣道の道場を代々経営しているんだけど、後継ぎは娘の私1人しか子供はいない。  幼い時から剣道は大好きだったし、2段の免許だってある。  当然私が道場を継ぐものだと思っていた。  それなのに道場主で師範である父が突然、自分の代で道場を終わらせると言い出したのだ。  確かにこのご時世、道場だけで食べて行くのはすごく大変だと思う。  そんな中、私に苦労させたくないって言う親心だということは、私にだってわかるけど、私は剣道と道場が好きなのだ。  柱1つ1つに初代からの歴史が刻まれている木造の道場を維持していくのは大変だろう。  母がフルパートに出て家計を助けていることは知っている。  それでも大切にしたいと思う物が誰にだってあって、私にはそれがうちの道場なのだ。
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