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やっぱり、昼休みの売店は混んでいた。
私はいつものように、いちごオレを見つけて手に取る。
いや、取ろうとした。
「「あ。」」
いちごオレに伸ばされている手が二つ。
一つは私ので、もう一つは――…?
私はその手を辿って、相手の顔を見る。
「…。」
「…。」
知らない人。
どうしよう…。
「失礼しまーす…。」
そろりといちごオレに手を伸ばす。
いちごオレは譲れない。
「それ、俺のなんだけど。」
「すみません。おっしゃる意味がよく分かりませんので。」
私はニコッと笑って、もう一度いちごオレに手を伸ばす。
やっと会えた…私のいちごオレ。
「さっ、佐野!」
私がお金を払って売店を出ると、さっきの男が立っていた。
「な、何ですか?」
なんで、佐野って…?
「俺、同じクラスの奴なんだけど!」
「…ふぇ?」
お な じ く ら す ?
「あっ、えとっ…こんにちは!」
混乱して何故か挨拶している私。
「あっ、こんちは。」
律儀にもその人は挨拶を返した。
「…。」
「…。」
何なんだろう、この沈黙。
もしかして、いちごオレの事根に持ってるのかなぁ?
「ごめんなさい…。」
そんなに、いちごオレの事が好きだったなんて。
私は消え入るような小さな声で謝った。
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