血に淀む真実

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  「嫌やって…握られへんよ…っ!」 男集団特有の散らかりっぱなしな事務所に無機質な音が響いたのはすぐのことだ。 彼によって投げられたリボルバーは、虚しく床へと転がった。 『すばる…』 『落ち着け。な?大丈夫やから』 「何が大丈夫やねん!説明しろや!」 ヒナに掴み掛かるその手が震えているなんて、きっと本人ですら気付いているだろうに。 まだ幼過ぎたんだ。成人も迎えない俺達が人を殺めるには無論理由はあるけれど、でもそれは俺達みたいな子供が増えないためであって。 それなのに。 数週間前のことだ。俺は依頼の受理、ヒナは計画、実行は銃の名手と言われたすばるの仕事で。 いつも通りのこと。ターゲットのいる部屋を眺められる場所で俺とヒナが待機してすばるがターゲットを撃ち抜く。いつもと、同じ。 同じだったはずなのに。 右手から放った弾はターゲットを捕えた。問題は利き手ではない左手で。誤って発砲してしまったのだろう。その弾は傍らにいたターゲットの息子を捕えた。 走って出ていくすばるが見える。あいつは警備員に恐れたわけではない。きっと、自分自身の過ちから逃げ出してしまいたかったんだ。 『仕方ないことだってある』 「そんなもんない!あの子にはまだこれからたくさんの可能性があった!それなのに…っそれなのにオレがあの子の人生を奪った!」 投げ捨てられた銃を拾い上げれば、銃口付近には小さな傷が複数で。あれほど大切にしていたのに。 ヒナに向かってまだ喚き散らす奴が正直面倒で、窓を開け放し一発撃ち放った。 びくりと震えたすばるの頭にそれを突き付ける。 『もう戻られへん。わかっとるやろ』 無理矢理手に握らせて部屋の隅にあるソファーへと座り込んだ。 『俺らを追って、安田たちもここに来る。そこに俺とヒナだけでどうする。すばるは怖くて逃げ出しました、だなんて誰が納得すんねん。なぁ、…答えろや!』  →  
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