2人が本棚に入れています
本棚に追加
「それでは続けましょうか。ここがどういう店かは聞いていますよね」
「まあ、一応。帽子屋…ですよね」
僕と帽子の子の前にお菓子が運ばれる。
「社長、これで最後なんだけど」
「ああ、別にいいですよ」
お菓子を運んできたきれいな人と帽子の子はそれだけ話して僕の方へ向き直った。
「表向きには帽子屋となっていますね。いや、裏向きでも一応帽子屋ではあるんですが。どうぞ好きなの食べてください」
「ありがとうございます。と言いますと?あ、これ美味しい」
「それボクも好きですよ。表向きにはその名の通り帽子屋として帽子……以外にも売っているんですが、いわゆる服飾品店のようなことをやっています。それは知っていますよね?」
事前に聞いた話では確かそう言われた。
自分の記憶と合致させてから頷く。
「裏向きには『帽子屋』という名前で何でも屋のようなことをしています。何でも屋といってもいろいろ制限はありますけど。要するに裏での帽子屋はただの事務所名。明日から魚屋に変更したければしても構いません。他機関とのやり取りが面倒なのでおすすめはしませんが」
名前については分かった。
けど裏ってなんだ裏って。
「ここにいれば後々分かりますよ」
それだけ言って意味深な笑みを浮かべられた。
正直怖い。
「それにしても遅いわねあの子。大きい方かしら」
きれいな人が真顔でそんなことを言う。
やめて!
そんなこと言ってもギャップ萌えにすらならないから!
「あいつのことだからトイレに行かずに別のことしてるんでしょう」
呆れたように帽子の子が言う。
「まあ、後はあいつが帰ってくるまで特に説明することもないので適当に待っていてください。この部屋の中だったら動き回って構いません」
結局グラサンナイフ男が帰って来たのは僕が立ち上がってから20分後だった。
最初のコメントを投稿しよう!