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「と、知宏、痛いよっ、それに人が……」
街中で力強くボクの手を引っ張って歩く知宏に抗議をしても、一方に聞き入れてくれない。
ボクは少し涙目になりながら、彼についていくために精一杯歩いた。
バタンッ
知宏のマンションに着き、玄関に入った途端、知宏に抱き締められた。
「遥……ごめん。俺、今すごく木場に嫉妬している」
「え?」
「ごめん……そんな顔させて。腕も痛かったよね」
いつも自信に溢れている知宏がシュンとなり、ボクの肩にうなだれた。
「なんでも……俺、遥の一番になりたいんだ」
ギュッと腰に回された腕の力が強まる。
「遥は多趣味だけど、俺はサッカーしかないだろ?たまに遥が俺に飽きないか不安になるんだ」
「知宏……」
弱気な彼に驚きながらも、ボクは知宏の顔を上げさせた。
そしてそっと唇を重ねる。
「……ボクも言いたいことある」
「え?」
「知宏が人気者で……すごく不安になる。ボクみたいな……」
「遥」
話の途中だというのに、知宏はボクの唇に人差し指で触れる。
「俺が遥に近づく奴らを遠ざけているって知ってる?」
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