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「ごめんなさい、別れて」 もう何度、この言葉を聞いただろう。 「いいよ」 驚きながらも、精一杯発する3文字の言葉。 「ありがとう」 彼女はホッとした表情で俺の元から去っていく。 何が、「ありがとう」だ。 ばーか。 ……いや、ばかは俺か。 一ヵ月で、三回フられるって。 マジ、ありえない。 「せーんぱい。またフられたんですか?」 窓から顔を出し、頬杖をついて笑っている男。 「……っかやろう。んなこと、聞くなよ」 目も合わさず、真実を素直に口にしないのは。 聞いてきた後輩、萩原が。 死ぬほど嫌いだからである。 理由は簡単。 萩原が現われるまで、俺は学園ナンバーワンのモテ男だったからだ。 それが、今年の春。 コイツは俺の全てを奪っていった。 頭は大変よろしいようで、入学式で新入生代表として挨拶。 スポーツ……テニスは中学からやっており、俺からシングルの座を奪い取り。 性格は人懐っこく。 こんなに露骨な態度をしている俺にも、声をかけるほど。 現状、自分のまわりにいた女の3分の2は、萩原にとられてしまった。 .
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