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「せーんぱい、こっち向いて下さい」
甘ったるい言葉が、やけに耳障りだ。
鳥肌になっちまうほど。
「……なんだよ」
萩原は、ニコッと笑ってキットカットを投げてきた。
「失恋祝いでーす」
「…っせ」
俺は貰ったものを投げ付けようとしたが、好物なのでそうすることができなかった。
「じゃ、また部活で」
手をヒラヒラとさせた萩原に、俺は舌打ちをして教室に戻った。
――――
「圭太、フられたのか?」
教室に戻ると、幼なじみの克也がニシシッと笑ってきた。
「かーつーやー」
俺は萩原からの仕打ちでのストレスを、悪友にぶつけた。
「おわっ、マジいてえ!」
「天罰だ、ばーか」
両頬を思いっきり引っ張り、グリグリさせる。
「んふぉいっ、おみゃえのために、昼飯買ってきてぅあのに」
「は?何言ってんのか、さっぱりわかんねーよ」
克也の指差す方向には……。
「サンキュ!うわぁっ、これ限定10食のフルーツサンドじゃん!!克也、大好き、愛してるっ!」
ぱっ、と手を離して、俺はフルーツサンドを鼻歌まじりでぱくついていく。
「変わり身はえーよ、圭太」
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