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彼……木場くんは知宏と同じクラスなのに、ボクを介してしか知宏と話をしなかった。
それに、知宏のやらないカードゲームの話ばかり口にする。
ボクは少し気まずく感じられた。
「へえ、木場がそんなに詳しいなんて知らなかったよ」
知宏の顔を見ると、ボクは萎縮してしまう。
恋人になってからわかったのだけれど。
知宏の笑みにも2パターンある。
本当に笑うときと、感情を抑えるときと。
今の笑みは後者だ。
「もっと俺も詳しくなりたいな。ね、遥」
「う……、と……長田くんはそのままでいいと思うよ」
知宏がボクに合わせて三国志のゲームに付き合ってくれるのは嬉しい。
だけど、無理はしてほしくない。
別に趣味が合わなくても、ボクが知宏のことをだいすきというのは変わらない。
そういう意味でボクは言ったつもりだった。
「そういうこと言うんだ。冷たいな、遥は」
知宏の声で、ボクはすぐにヤバいと思った。
「木場、俺達ここだから。じゃあな」
「は?遠藤ってもっと先の駅で降りるんじゃないか?」
知宏はその言葉に頷きもせず、ボクを電車から降ろした。
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